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2022.12.8(木)

11/17ルイ・パスツール生誕200周年セミナー「クリルスキー先生を囲む会」
実施報告

日本パスツール財団では、11/17(木)国立国際医療研究センター(NCGM)と共催で、ルイ・パスツール(1822-1895)生誕200周年記念セミナー「クリルスキー先生を囲む会」をハイブリッド方式で開催しました。会場参加者はNCGMスタッフに限らせていただきましたが、オンラインを中心に約70名の方が参加されました。

NCGM研究所の狩野繁之博士(熱帯医学・マラリア研究部部長)の司会により、冒頭、NCGM理事長の國土典宏博士による開会の辞がありました。内容は、本年が森鴎外(1862-1922)の没後100年の節目にあたることから、「森鴎外とルイ・パスツール」と題して、同時代人として生きた二人の科学者の歩みを振り返るものでした。鴎外の日記には、パスツール研究所(1888年11月開設)の建物ができる少し前に訪問したが、パスツールとの面会はかなわなかったと書かれているそうです。鴎外は、軍医、細菌学者、公衆衛生の専門家、高級官僚、小説家、詩人、そして翻訳家の顔を持つ多才な人であったとの報告がありました。

続いて、フィリップ・クリルスキー教授(パスツール研究所名誉所長、コレージュ・ド・フランス名誉教授、フランス科学アカデミー会員)の著書『免疫の科学論』の訳者であり、サイファイ研究所代表の矢倉英隆博士より、クリルスキー博士についての紹介がありました。矢倉博士が強調されたのは、クリルスキー教授が科学の中だけではなく、社会との関係で思索を深めていること、そして一般向けの書物を継続的に刊行されていることでした。

その後、クリルスキー教授の基調講演ビデオが、約34分にわたってスクリーンに映し出されました。博士は、自らの講演を、今年2月に亡くなった恩師のフランソワ・グロ博士(1925-2022)に捧げられました。講演の中でまず指摘されたのは、研究というものが時間がかかる営みであるという点です。たとえば、メッセンジャーRNA(mRNA)が単離されたのは 1961年ですが、 COVID-19 (新型コロナウイルス感染症)のための mRNA ワクチンが開発されたのは 2021年で、60年もの時間が経過しています。そこに、基礎研究の継続的なサポートが重要で、科学を止めてはならないというメッセージがありました。パスツールは、微生物と微生物学の重要性、生物学における化学の重要性、実験モデルの重要性を説きました。クリルスキー教授は、パスツール自身の言葉を引用しながら、彼の思想を紹介していました。それは、現代生物学の問題は「複雑性」が中心課題になっているとの考えです。この問題を解決するためには、効果的であるが故に長い間優勢であった還元主義から離れ、全体論的(ホーリスティック)なアプローチを考える時期に来ていると述べられました。

基調講演の後は、早朝のパリからオンラインで参加されたクリルスキー先生を囲むパネル・ディスカッションとなりました。ここでの司会は、パスツール研究所教授であり、同研究所日本事務所代表のアナワシ・サクンタパイ博士が務めました。パネリストとして参加されたのは、パスツール研究所と共同研究プロジェクトを推進中の次の方々です。
石井健博士(東京大学医科学研究所 感染・免疫部門 ワクチン科学分野 教授)、狩野繁之博士(NCGM研究所 熱帯医学・マラリア研究部部長)、松田文彦博士(京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター長、教授)。

始めに、サクンタパイ博士より、パスツール研究所ジャパンの今後の活動計画について説明がありました。パスツール研究所は世界中にネットワークを構築し、各地に研究所も建てているが、日本にはまだ存在しない。そこで、少なくとも日本各地の大学や研究機関との共同研究や若手研究者の育成の分野で機能的な連携を強化して行きたいとのことでした。

松田博士は、滋賀県長浜市で長年にわたりコホート研究のノウハウを蓄積されており、ワクチンに対する集団の反応を解析してこられました。COVID-19 の感染について、その抗体の有無を1,100人について解析した結果、ヌクレオカプシドに対する抗体が180人に見つかったのに対し、自覚症状があったのはその 1/3 にしか過ぎなかったとの報告がありました。ということは、意外に多くの人がこのウイルスに感染している可能性があることが想像されます。

続いて石井博士は、日本のアカデミアにおけるワクチン開発の現状について話されました。ワクチンで予防可能な病気は30ほどあるようだが、アフリカなどの発展途上国ではワクチンが行き渡っていない。COVID-19に関しても、ウイルスの変異はアフリカから出ている。その意味でもワクチンを広げることが欠かせないのだが、WHOもこのことを念頭に活動しているとのことでした。日本製のワクチンは現在進行中で、いくつかはフェーズ3の段階に入っているので、近い将来市場に出回るものと期待されるとの報告がありました。

狩野博士は、ラオス・パスツール研究所とNCGMの研究協力の歴史を紹介された後、現在新たな共同研究プロジェクトをパスツール研究所と検討中であることを報告されました。日本で COVID-19 のワクチン・薬剤開発がうまく行かなかったのは、Made in Japan (すべてを日本人が)という意識が強すぎたせいかもしれないとのご指摘もありました。むしろ、今後はMade with Japanで、国際協力の輪の中心に日本がいる研究開発を積極的に広めることが肝要であるとのことでした。

最後に、共催者代表として、日本パスツール財団の清水治代表理事より閉会の言葉を述べさせていただきました。当日のセミナーの様子を、いくつかの画像で以下にお伝えします。
会場を提供いただいた国立国際医療研究センター様、及びこのセミナー開催にあたって助成金を賜りました公益財団法人原田積善会様に感謝申し上げます。

※なお、この実施報告記事作成にあたっては、矢倉英隆博士のブログ記事を大いに参考にさせていただきました。ご協力に感謝申し上げます。


クリルスキー先生を囲む会の写真
クリルスキー先生を囲む会の写真
クリルスキー先生を囲む会の写真
クリルスキー先生を囲む会の写真
クリルスキー先生を囲む会の写真
クリルスキー先生を囲む会の写真
クリルスキー先生を囲む会の写真
クリルスキー先生を囲む会の写真
クリルスキー先生を囲む会の写真

ルイ・パスツール ロゴ

※なお、本イベントは、パリのパスツール研究所が認定するルイ・パスツール生誕200周年事業の一つとして登録されています。