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2022.4.14(木)

【パスツール研究所に派遣のポスドク セベール・ヴァンサンさん活動レポート(その3)―年次進捗報告】

2019年末に、パスツール研究所・在日フランス大使館・日本パスツール財団の3者共同出資による初のポスドク奨学生として選考され、2020年3月にパリのパスツール研究所に着任したジャンヌ・ペルペチュ・ヴァンサンさんから、2年目の活動レポートが届きました。
アフリカでのB型ウイルス性肝炎 (HBV) 母子感染対策 に、彼女が研究する出産直後ワクチン (バースドーズ) が非常に有効であることが判明しました。
ブルキナファソで1900人の産婦とその赤ちゃんを検査したところ、お母さん178人(9.4%)が感染しており、子供の感染は41人(2.2%)と大変高率でした。一方、出産直後の赤ちゃんにワクチン接種したケースでは、今のところ感染者はゼロとなっております。
また今後は、高価で取り扱いの難しいPCR検査に代わる3つの検査法の評価を行う予定です。3つのうち2つは日本で独自に開発されたものです。
詳しくは、下記の年次進捗報告をご覧ください。

年次進捗報告(2021年3月~2022年3月)

パスツール研究所のポスドクとして2年目を終えましたが、この間、島川祐輔博士の指導のもと、ブルキナファソで実施されているNEOVACプロジェクトに従事しました。このプロジェクトの主な目的は、国の定期予防接種プログラムに、新たに、バース・ドーズ・ワクチン(出生直後に投与するB型肝炎(HBV)ワクチン)を導入することで、どれだけ新たにB型肝炎に感染する赤ん坊を減らすことができるかを評価することです。お陰様で、この12ヵ月で、私たちは大きな進歩を遂げました。

ブルキナファソのHaut-Bassins地方のDafra地区とDo地区の24の保健所にて、当初の計画通り、計8500人の妊婦が研究の参加に同意しました。

このうち、2022年3月までに約4900人の妊婦が無事、出産しました。この間、バース・ドーズ・ワクチンが、各保健所に徐々に導入されました。現時点で3300人の乳児がバース・ドーズ・ワクチン導入前に生まれたのに対し(未接種群)、1600人の導入後に生まれた乳児において、バース・ドーズ・ワクチンの接種が完了しました(接種群)。また、この子供たちと母親に関し、生後9か月目以降にHBV感染状況を調査しますが、現在までに1900組の母子で調査が完了しました。母親においては、1900人中、178人がHBVに感染していることが判明し、非常に高い有病率(9.4%)を認めております。一方、子供1900人のうち41人がHBVに感染していることが判明しましたが(有病率2.2%)、これら感染した児はすべてバース・ドーズ・ワクチン導入以前に生まれており(未接種群)、バース・ドーズ・ワクチン接種済みの児では今のところ感染例を認めておりません。まだ最終評価ができる段階ではありませんが、バース・ドーズ・ワクチン接種がアフリカにおいて非常に有効であることを示す、大変重要なデータと考えております。

また、当研究の基盤を利用し、診断薬の評価を行う予定です。具体的には、ミュラス研究所(Centre Muraz、Bobo Dioulasso)にて、HBVに感染した母親から採取した血液サンプルを用い、安価で簡易な検査の評価を行います。HBV DNAを測定するPCR検査は、HBV感染者が治療を必要とするか否かを判断するための重要な検査です。この検査は正確ですが、高価であり、アフリカをはじめ資源が限られている環境では実施することが困難です。そこで、資源に限りのある環境でHBV DNA PCRの代替として広く使用できるような、低コストのHBVマーカーを評価することは大変重要です。代替のマーカーとして、Loop-mediated Isothermal Amplification (LAMP)、B型肝炎e抗原(HBeAg)、B型肝炎コア関連抗原(HBcrAg)を想定しています。このうち、2つの検査は日本で独自に開発された技術を使用しています(LAMPとHBcrAg)。発展途上国で実施困難なPCRに代わる検査を広く導入できれば、HBV診断へのアクセスが大いに改善し、HBVの世界的エリミネーション(排除)に大きく貢献すると考えられます。

NEOVACプロジェクト以外にも、いくつか進展がありました。アフリカのHBV感染者を対象に、Mac-2 Binding Protein Glycosylation isomer (M2BPGi)という新しい診断マーカーが、肝線維化や肝硬変を診断するのに有用かどうかを評価した論文を執筆しました(現在、医学誌において査読中)。また、肝線維化や肝硬変だけでなく、この西アフリカの集団における肝臓がんとの関係も評価しました。 M2BPGiはもともと日本で開発されたマーカーで、アジアにおいては肝線維化の血清マーカーとして有用であることや、肝臓がんの発生の予測に有用であることが示唆され、大きな関心を集めています。 しかし、これらの知見は、アジア域外ではまだあまり検討されていません。本論文は、アフリカの患者におけるこのマーカーに関する最初のデータであり、アフリカにおいても、このマーカーが有用であることを示すことができました。

最近始めた新しいプロジェクトでは、筑波大学にいる同僚とともに、ハイチ人におけるB型、C型、D型肝炎の感染率を評価することを目的としたシステマティック・レビューを行っております(登録番号: PROSPERO 298081)。現在、その結果を論文としてまとめているところです。

この2年間を振り返るなか、3者共同ポスドク奨学生の第一期生としてパスツール研究所で疫学研究に従事できたことを大変誇りに思い、また、サポートしてくださった日本の皆様には改めて深く感謝しております。 COVID-19の影響でなかなかプロジェクトが進まない時期もありましたが、その点を考慮いただき、私のポスドクはさらに6ヶ月間延長されることが決まりました。そして、ウイルス性肝炎の研究を行うなか、パスツール国際ネットワークや日本、イギリス、アフリカの他の国々の共同研究者とのネットワークを大いに広げる機会を得ました。

そして最後になりますが、今日は大変素晴らしいニュースを報告させていただきたいと思います。フランスのANRS-MIE (AIDS、ウイルス性肝炎、新興感染症に関する国立研究所)より、更に2年間のポスドク・フェローシップを得ることができました!お陰様で、引き続きB型肝炎の母子感染予防のプロジェクトに従事することができ、とてもうれしく思います。2年後には、現在進行中のプロジェクトが更に発展し、私のキャリアもより前進することができるよう、研鑽を積み重ねていきたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

2022年3月
ジャンヌ・ペルペチュ・ヴァンサン
パスツール研究所新興感染症ユニット
パスツール研究所-在日フランス大使館-日本パスツール財団第1回ポスドク奨学金受給者

PDF版はこちらから⇒

2度目のポスドク奨学金受給決定を祝う夕食会を、パリの日本料理店にて。ブルキナファソの共同研究者ドラマネ・カニア博士(左)と島川祐輔博士(右)とともに。